【連載 第5回】1973年、新しいビルへ — いまの姿ができるまで
東京ラジオデパートの75年をたどる連載・第5回。第4回はこちら。
1973年10月、新装開店
木造2階建てで23年間商いを続けた東京ラジオデパートは、1973年10月、6階建てのビルへと生まれ変わりました。売場は地下1階から3階まで。これが、いま私たちが見ている建物です。
路上の露店から木造の館へ、そして鉄筋のビルへ。生きた市場が、時代に合わせて器を替えながら中身を受け継いでいく。ラジオデパートの建て替えは、単なる建築の更新ではなく、「部品の市場」という文化の引っ越しでした。
フロアに個性が宿る
ビル化によって売場が4層に整理されたことで、フロアごとの個性が育っていきます。現在のフロアガイドを見ると、その蓄積がよく分かります。
- 1Fは、LEDや汎用部品、キット、PC・スマホ関連まで間口の広い「玄関口」
- 2Fは、真空管とオーディオ部品の専門店が集まる「音の聖地」
- 3Fは、電池や特殊部品など「探しものの最後の砦」
- B1Fは、ジャンクとPCパーツの「掘り出し物の地下街」
もちろん、店の入れ替わりとともにフロアの顔ぶれは変化し続けてきました。それでも「同じ趣味の店が近くに集まり、比べて選べる」という市場の原理は、露店時代から一貫しています。1つの建物の中に約36の専門店——この密度こそが、ラジオデパートの資産です。
変わる秋葉原を、定点で見てきた場所
1973年からの半世紀、秋葉原は何度も主役を交代させました。家電の街、オーディオの街、マイコンとPCの街、そしてポップカルチャーの街へ。
その激動を、ラジオデパートは同じ場所から見つめてきました。主役が変わるたびに部品街の一角は縮み、それでも消えることなく、新しい「作る人」たち——自作PCブームの若者、電子工作に目覚めたメイカーたち、レトロPCを愛でる大人たち——を迎え入れてきたのです。
半世紀を経たビルには、時間の重みが刻まれています。狭い階段、年季の入った案内板、棚の奥のデッドストック。それらは不便さではなく、この場所が「本物の市場」として生きてきた証しです。
最終回は、いよいよ現在。インターネットの時代に、75歳の部品デパートはどこへ向かうのか——オンラインマーケット「ラジデパ」誕生の話です。
